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しかし、未だに誰を撮るのかは教えてくれないし、どうして同席を?と訊いても適当にはぐらかすので、その訳も分かっていない。帰省とはいえ、せっかく一緒に遠出をするのに分からないことだらけだ。
「心の準備くらいさせてよ……」
エンジン音が響き渡る機内のなか、私は小声で呟いた。
————……
到着した稚内空港は以前と変わらずコンパクトで、到着ゲートのすぐ隣にチェックインカウンターが見える。反対側には地元信金の広告が掲示されていて、これがいつも“帰ってきた”ことを知らせてくれた。
「あっ、青柊だ!おかえりー!」
ゲートを潜ると、早速目の前から知らない女性が駆け寄ってきたので、私は分かりやすく硬直する。細いスキニーを履きこなす、ワンレンボブの美人だった。
もしかしてこの人が——、
「車で待ってていいっていったじゃん、姉ちゃん」
「姉ちゃん?!」
八坂の背に隠れたまま復唱すると、彼の影からひょこっと美人が顔を出す。「こんにちは!」とワンレンが垂れ、満面の笑みが私を迎えた。
「す、すみませんっ、ご挨拶の前に……」
「いーのいーの、うちの愚弟が説明不足なだけだから。ほら紹介!」
八坂は彼女に肩を叩かれ、息を吐く。第一印象で血の繋がりは感じられないが、少しつり上がった目元は似ているかもしれない。
「姉の森戸楓です。年は俺の四つ上だから……小國さんよりも年上です。たぶん」
「そんなことは言わんでいい」
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