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瞬間、八坂が隣でクスッと笑う。また余計なことを言い出しそうだったので、横目で睨んだ。
「あの……お姉さんは、お子さんがいらっしゃるんですか?」
訊くと、楓はミラー越しに目を細める。
「うん、いるよ~。娘ね」
「へえ……いいなぁ」
「お、結婚願望はあり?子ども欲しい? てゆーかぶっちゃけ、最初見たときは青柊の彼女さんかと思っちゃったよ。うちの弟は本当に言葉足らずでねー、連れてくるのが女の子だとは思わなかった」
早足で駆け抜けるトークに相槌を入れ損ねる。彼女、という台詞に心臓が跳ねたまま、私は再び隣を睨んだ。
「八坂くん、言わなさすぎだよ。お姉さんにも私にも」
「大まかには説明したんだからいいじゃないすか」
「「よくないから」」
重なる言葉に続いて笑い声が反響する。
以降、八坂は居心地が悪そうに外を眺めていた。姉と妹に挟まれる真ん中の彼は、いつもこんな立ち位置だったのかもしれない。
「モデルの方は、直接撮影場所に来られるんですか?」
「モデル……?ああ~そうね、モデルはねぇ、いま色々セットしてもらってるから、直接向かってるよ」
「そうなんですね」
「綺麗に仕上がってると思うから、楽しみにしてて」
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