Ⅷ.西洋菊

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 瞬間、八坂が隣でクスッと笑う。また余計なことを言い出しそうだったので、横目で睨んだ。 「あの……お姉さんは、お子さんがいらっしゃるんですか?」  訊くと、楓はミラー越しに目を細める。 「うん、いるよ~。娘ね」 「へえ……いいなぁ」 「お、結婚願望はあり?子ども欲しい? てゆーかぶっちゃけ、最初見たときは青柊の彼女さんかと思っちゃったよ。うちの弟は本当に言葉足らずでねー、連れてくるのが女の子だとは思わなかった」  早足で駆け抜けるトークに相槌を入れ損ねる。彼女、という台詞に心臓が跳ねたまま、私は再び隣を睨んだ。 「八坂くん、言わなさすぎだよ。お姉さんにも私にも」 「大まかには説明したんだからいいじゃないすか」 「「よくないから」」  重なる言葉に続いて笑い声が反響する。  以降、八坂は居心地が悪そうに外を眺めていた。姉と妹に挟まれる真ん中の彼は、いつもこんな立ち位置だったのかもしれない。 「モデルの方は、直接撮影場所に来られるんですか?」 「モデル……?ああ~そうね、モデルはねぇ、いま色々セットしてもらってるから、直接向かってるよ」 「そうなんですね」 「綺麗に仕上がってると思うから、楽しみにしてて」
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