Ⅷ.西洋菊

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 ┈••✼  着いたのは『最北端の地の碑』が佇む宗谷岬付近の丘陵。島育ちのため風の強さには慣れたものだが、やはりこの辺りはレベルが違う。見渡すと、壮大な地形と気候を生かした大型風車が遠目にいくつも整列していた。  あの風車の先端は新幹線よりも速いんだ、と教えてくれたのは両親だ。物心がついてすぐに事故で亡くなってしまったので、それが二人から貰った唯一の知識だった。 「あれ、もう着いてんじゃーん。青柊と縁凪ちゃんも降りちゃってね~」  丁寧に整備された道を進んだ楓の車は、青い乗用車につけて停車する。彼女の指示に応じて扉を開けると、車を叩きつけていた強風が吹き込んで、思わず「きゃあっ」と顔を沈めた。  あ……これ扉が、 「大丈夫ですか」  もっていかれる——と、あまりの強風に両手を添えた瞬間、後ろから伸びる長い影。抑揚のない声が被さった方向を見上げると、シートに片膝を突いた八坂の左手が扉を押さえてくれていた。 「だ、大丈夫……」 「風やばいっすね」 「うん。やばいね、強風だ」  背凭れと八坂に阻まれた私は御礼すらも言いそびれ、ただ目の前の体を見上げる。  線を辿っていく先にある瞳は、かち合えば何もかも容易く壊していく銃のようだ。これまで一所懸命に積み立ててきた覚悟が瓦解しそうになるのを、私はどうにか防ぎたかった。 「寒くないですか?俺のでよければ貸しますけど」
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