Ⅷ.西洋菊

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 少女に目を奪われている間に、運転席からもう一人降りてくる。彰宏は朗らかな笑みを見せた。 大きな図体とは裏腹、気はあまり強くなさそうで、人柄の良さが滲み出ている。歳は三十代半ばといったところだろうか。 「こんにちは、小國縁凪といいます。お願いします。……今日は菜乃葉ちゃんの撮影を?」 「そう。七五三の前撮りを青柊にお願いしててね。って、アイツ本当に言葉足らずでゴメンネ」  楓は、菜乃葉の小さな肩に手を添えながら眉を下げる。母親の姿を見上げてすぐに「こんにちは、森戸菜乃葉です!」とこちらに向く瞳は父親に似て朗らかで、しかし芯の強さも見てとれる。 「こんにちは、小國縁凪です。えっと……何て言えばいいのかな」 「あ……せーちゃんのコイビト?」 「違う。ただの知り合い」  屈んだ私と菜乃葉に刺さる即答。放った八坂を見上げながら、思わず眉を寄せた。 「ただの、って何よ」 「菜乃葉に元同僚って言っても通じませんから」  だからって、ただの知り合いはちょっと遠すぎない? 講義したくなる口元を必死で噤む。それに、元同僚も過去をなぞっているだけで納得がいかない。  私たちの関係って、一体なんなんだろう。 「じゃ、役者も揃ったし早速行きますか。ここ風強いし」  逡巡の最中、楓の台詞に大きく頷く。
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