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「あと考えられるのは——いや。だから、今日受ける決断が出来たのは、きっと縁凪ちゃんが居たからじゃないかな」
「え……いやそんな、」
「分かっちゃうんだな~、お姉さんには」
お姉さん、を強調した楓は「んじゃ行こっか」と菜乃葉たちの元へ足を進める。 私はその背中を追い、八坂の隣に屈んだ。
「どう?撮れてる?」
「撮れてますよ。菜乃葉はいいモデルなので」
「それ、私が悪いみたいな言い方」
「悪いとは言ってない」
楓から生い立ちを聴いたせいか、随分久しぶりに会うような感覚が体の芯を温める。
「八坂くん。戻ったら再開しよう」
—— “花よめ”。
続けると、振り返った彼はあまり驚いた様子もなく向き直る。再び向けられた背は「はい」と小さく紡いだ。
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