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「えなちゃんえなちゃん。今日ね、本当はかみのけ切っちゃおうとしてたの」
「え……?そうなの?」
「うん。ひちごさんのお写真が終わったら切ろうねって、ママとゆびきりしてたの」
「菜乃葉、“ひちごさん”じゃなくて、“しちごさん”な」
「……ひ、しちごさん……?」
「そう。上手だな」
菜乃葉の頭を優しく撫でる八坂。反動で目を瞑った少女は幸せそうに笑みを咲かせた。
なんだろう。ちょっと羨ましい。
「俺は長い方が好きだから、そのままでいいんじゃない?」
菜乃葉の髪を絡めとる彼の指を眺めながら、私は自分の毛先を見つめる。月に一度のトリートメントでどうにか艶を保たせているが、やはり若さには叶わない。
……でも、伸ばしていて良かった。
「菜乃葉ちゃんならどっちも似合うと思うけど、どうして切るのやめたの?」
「本当はね、ママみたいにしたかったんだけど」
「たしかに、ママは短いの似合ってるよね」
「うん。でもね……えなちゃんが、すっごくすっごくかわいいから」
無垢な瞳が一所懸命に訴える。自分の髪を握りしめた小さな手に、私は自分のそれを重ねた。子どもの体温は想像以上に温かかった。
「……それで、伸ばすって決めたの……?」
大きく縦に振れる小さな頭。丸見えの旋毛が愛おしくて、思わず彼女を抱き締めた。
「ええ~……もうどうしよう。菜乃葉ちゃん持って帰りたい」
「やめてください」
「菜乃葉、今日はえなちゃんと一緒のお部屋で寝たい!」
少女の小さな手も背中に及ぶ。
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