Ⅷ.西洋菊

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 PC画面に浮かぶ菜乃葉の写真データと、柔い笑みを浮かべる八坂を交互に見ながら反芻する。 「え……取り戻せた、って、(まえ)は撮ってたの?」  同時に楓が云った彼の生い立ちを辿り、首を傾げる。  聴いた家庭の環境から、てっきり最初から人を撮ることを避けていたのだと思っていた。 「一応、写真部のときにはそれなりに」 「写真部……」 「高校は部活目当てで選びましたし、普通に撮ってましたよ」 「じゃあどうして、」  皆まで言う前に汲み取った八坂は、カメラに視線を注いで切なげに笑みを零す。  自分を押し込め、コミュニケーションが不得手であったこと以外にも理由がある。彼の横顔はそう語っていた。 「気になりますか」 「え……いや……無理に話さなくても、」 「知りたいですか、俺の事」  再び私を捉える瞳に心臓が鳴る。肋骨が張り裂けてしまいそうなほどに大きな一打ちだった。 「——うん。知りたい」  声は震えていないだろうか。しっかり紡げているだろうか。  乱れる脈の音が鼓膜を占めて、自分の声すら拾えない。心なしか潤う彼の真剣な眼差しに緊張が張りつめる。意味もなく、泣きそうになった。 「取り留めのない話ですが」 「ううん。そんなことない」 「……ありがとうございます」
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