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「ただ、俺はいまより人と接するのが得意ではなかったので。励ます言葉なんて、何も思い付かなかった。でも、写真なら伝えられると慢心してたんです。バカみたいに」
吐き捨てたような語尾に嘲笑を含む八坂。それは八坂自身に向けられたものだった。
「現像した写真を渡した途端、それまで明るく振る舞っていた友人は、人が変わったように怒号を飛ばしました」
「え……なんで、」
「『残してほしいなんて頼んでない。侮辱したいのか。せっかく忘れようとしていたのに』、全部覚えてますね。未だに」
走る舞台に立てなくなった八坂の友人は、痩せ細っていく自分の脚に現実を叩きつけられながらも、新しい自分を受け入れようともがいていた。そんなときに、もう戻ることの自分を一枚の写真として見せた八坂に当たったのだという。
「ただ、どんな言葉で蔑まれるより、謝る言葉が足りなくなったことより、……目の前で破られたことの方がよっぽど堪えた」
—— “写真は時に暴力になる”
アニメフェスで八坂が紡いだ言葉の真意。それは、彼が人を撮らないのではなく、撮れなくなってしまった過去の出来事をなぞっていたのかもしれない。
「そういう訳で、俺は人を撮ることが恐くなったんです。シャッターひとつで向き合うことも出来なくなった」
「八坂くん、」
「どう表現しても、写真は過去を写し出す。だから尚更、未来の足枷になっちゃいけないんですよ」
「……なってないよ」
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