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自分の写真が足枷になってしまった。そんな言い方に聞こえたのは、きっと気のせいではない。
私は懸命に喉を開いて、拳を握りしめた。
「絶対、八坂くんの写真は足枷になんてなってないから。絶対に」
「言いきりますね」
八坂はこちらに視線を流し、息を溢す。
「破ったそのときは分からなかっただけ。ちゃんと、……ちゃんと写真を見れば、八坂くんがどんな思いで写してくれたか分かるよ。なんで渡したのかも、きっと伝わってるよ」
言い終えると、思いの外力んでいたのか息切れを催す。八坂は笑った。
「小國さんは励ますの巧いですよね。前もあったな、こんなん」
「そうだっけ……?」
「はい。電車のなかで」
「……ああ、うん、あったかも」
思い出し、顔を見合わせて同じように笑みを零す。すると、彼はゆっくり私の手を掬い上げた。突然のことで、心臓と連動したように肩が跳ねた。
「な、なっ、」
「まあこんな感じなので、また人が撮れるようになったってのは割とすごいことなんですよ。俺にとっては」
「あ、の……この手はいったい……」
「すみません。菜乃葉への接し方が抜けなくて」
「——っ」
だったら早く放したらいいものを、と声にならない声で叫ぶ。全く解放する気のない憎たらしい笑みに、血管がはち切れそうになる。紅潮する顔を隠そうにも両手が塞がれていては困難で、私はただ視線を横に逸らした。
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