Ⅷ.西洋菊

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「不本意ですが、感化されてたみたいです。わりと最初から」 「……感化?」 「SNSのことも、元旦那に対してもそうでしたけど、逃げずに立て直そうともがく泥臭さとか」 「泥……」 「自分の弱さを自覚して、それを強さに繋げようとする小國さんに、感化されてました」  握られた手に軽く力が込められる。一緒に心臓まで絞られていることを、八坂は知らない。 「だから、今日はついてきてもらったんです」  証拠に、彼は追い討ちをかける。ビー玉のような双眸に貫かれた眼球から、脳ミソまで隈無く熱された。 「しっかり菜乃葉(ひと)を撮れるようになったところを、小國さんには見てほしかったから」 「——……」  瞬間、心臓はついに止まってしまったのかと思うほど静かになる。怖いくらい、脈の波も平坦だった。 「八坂くん」 「はい」 「私——八坂くんが好き。……大好き」  それは、誤魔化しの効かない気持ちが溢れる、兆しだった。
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