慶太の驚き

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慶太の驚き

 「慶太には言っておきたくて。僕と翔ちゃん、付き合う事になった。」 僕が少し緊張気味にそう言うと、慶太は分かりやすく目を見開いた。それからゲホゲホと咽込んで、僕は慌ててティッシュを渡す羽目になった。 「え?どう言う事?…兄貴って彼女居なかったっけ!?」 僕はやっぱり慶太に話すのは早まったかと少し後悔しながら、ここまで話したらちゃんと話をきいてもらうしかないと思った。  「僕、昔から翔ちゃんが好きだった。でも翔ちゃんは自分の友達が僕を押し倒そうとした事の罪悪感で、絶対に僕と同じ好きを返してくれないと思ってたから諦めていたんだ。 だから、ある意味自暴自棄になってて、僕に優しくしてくれる人なら誰でも良かったのかもしれない。今考えればそれってどうなのかなって思うけど、元々僕はそれくらいマトモじゃないし。分かるでしょ?慶太なら。でも遊び歩いているのを翔ちゃんは嫌だと思ってたみたい。 結局僕が翔ちゃんのチームメイトと一緒に買い物してる時にばったり会って、翔ちゃんがもう我慢の限界になったんだって。だったら俺にしろ的な?翔ちゃんも僕の事好きみたいだよ?」  慶太に言えるのはここら辺迄だった。自分の兄と幼馴染の男が付き合い出したと聞いて複雑には違いないだろうから、どんな反応をするのか僕にも見当が付かなかった。すると慶太は僕をじっと見つめて呟いた。 「…だから兄貴あんなに動揺してたのか。俺、侑が先輩とキスしてるってうっかり兄貴話しちゃった事があって。凄く怒ってたって言うか、何か変だったんだよ。そっか、兄貴は侑が好きだったんだな…。あれ?でも彼女はどうしたんだろう。」  「付き合ってみたけど結局好きになれなかったって。別れたんだって。」 僕はそう言いながら口元がニヤけてしまう。彼女には悪いけど裏表ありそう話も聞いてたし、彼女より僕を選んでくれたからやっぱり嬉しい。 すると、慶太が僕の部屋のベッドカバーの上に仰向けで寝転びながら呟いた。 「そっか、兄貴が全然女子と長続きしなかった訳が分かった。ああ見えて結構モテるのに変だと思ってたんだ。侑の事好きだったせいかな。」  そう言って飛び起きると、僕に微笑んで言った。 「俺は応援する。元々兄貴は昔から侑の事大事にしてたのは知ってるし、何か納得した。侑はぶっ飛んでるけど、兄貴の事好きなのは本当だって感じるし。あー、でも絶対別れたらダメだぞ?これ以上複雑になると俺もお手上げだからな?」 僕は慶太が随分大人びた反応をしたのに驚いて、首を傾げた。 「慶太何かあった?」 すると慶太は少し顔を赤くして言った。 「誰にも言うなよ?彼女が出来ましたー!」  急にテンション高くそう言って、もう一度ベッドに転がった慶太に、僕は自分の事より慶太の事が気になって思わず誰なのか尋ねた。驚く事に、僕と同じ学年の女子だった。サッカー部のマネージャーらしい。僕は顔くらいは知っていたけれど、それ以上は良く知らない子だった。 「いや、この間のクリスマスの集まりが部活のメンバーだったんだけど、告られちゃって。元々可愛いなって思ってたからさ、まぁ先輩だけど話し易いし?でもバレたら二年に殺されるかも!」 そう楽しげに話す慶太にクスクス笑いながら僕は言った。 「そうかもね。生意気な一年だよね?二年生のマネージャーと付き合う一年生って。僕はあの子の事はよく知らないけど、可愛いしモテる気がするな。」 するとニヤニヤしていた慶太が急に眉を顰めて僕に言った。  「侑、先輩はどうするんだよ。いくら好きになっちゃダメとかって条件だったとしても、侑が付き合い出したらショックなんじゃないの?キスまでしておいて。」 僕は顔を曇らせて慶太から目を反らした。 「うん。そうだよね。とりあえず受験が終わるまでこのままで。忙しくてほとんど会ってないけど、先輩の高校合格は応援してるから。絶対に動揺はさせたくないから。」 僕がそう言うと、慶太は頷いて言った。 「ああ。俺もそれが良いと思う。…受験日って実際いつからだっけ?」
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