本書を手に取ってくれた全てのあなたへ

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 魔法とは、人文・錬金・工学・生物・心身・天象と6つのジャンルに分かれ、それらに付随する要素の魔法が戦闘向け~便利系まで幅広く存在する。文字の読み書きと同じくらい誰もが学習・習得するものだが、どのジャンルを身に付けよという地域的拘束性はなく基本自由である。  然しながらジャンルの得手不得手は個々によって存在するもので、それを知りたい場合は身近な”見る”魔法持ちに見てもらう必要がある。よって各町の長は、ジャンル:心身の者が多い傾向にある。勿論、見てもらい、得手ジャンルを知ったところでそれに囚われる必要もなく、現に得手ジャンルと真逆ともいえるジャンルで活躍する者も存在するし、得手ジャンルで仕事を持っているものの別ジャンルの魔法がやたらに上手い者だっている。  そうやって日を重ねていけば、ジャンル毎に、特に優れている者が現れる。  魔法使い協会の前身は、武術は勿論それ以上に魔法に特化した者たちによる討伐組合(ギルド)である。有志、勧誘を繰り返し増員していった構成員に、先人は、彼ら乃至彼女らの統制・管理及び適切な評価を与える目的から、ジャンル毎に優れた者たちに“栄誉魔法使い”という名を与え、こう呼んだ。(現代、襲名スタイルは、この国に散らばる魔法使い協会会員――勿論これには、純粋な協会員の他にその栄誉魔法使いも含まれる――が、年一度開催される集会にて、情報収集・面会・決定し、数年に一度、一名のみ選出している。)  するとどうだろう、彼ら乃至彼女らに、我がオリジナル魔法を残さんと一般人や馴れ馴れしい妖魔が売り込むようになった。結果(勿論彼ら乃至彼女らにも良識はあろう。然しながら判断し、選ぶのはあくまで彼ら乃至彼女らなのだ)、善なるものも悪意あるものも、存在を、その輪郭をもってしまった。  サンセベリアは「寛容」「追憶」の花言葉を持つ。魔除けの植物の名を、魔法という、人も妖魔も入り混じった混沌の器の名に冠するとは。そうも思うが、性別、ジャンル、人種どころか種族すら問わずその知を受け入れる矛盾さを併せ持った我々魔法使い協会にはいっそふさわしいのではないだろうか。然しながら増えすぎた魔法、人権や世の理を害するような魔法を査定し、添削する必要は大いにある。  協会及びこの国には、前述した6つのジャンルそれぞれに属する様々な分野の魔法が、栄誉魔法使いが存在する。   魔法使い協会会報誌『サンセベリア』は、栄誉魔法使いによる魔法発表の場[バーべイン]の章、有志による研究発表の場[ミスルトウ]の章、魔法や妖魔等”魔”に関連した物事を振り返る[オーク]の章、イベント情報の[エルダー]の章、などを揃えている。  この度、魔法発表の場である[バーべイン]の章がご好評につき、一度これまで発表してきた魔法を総ざらいすることにした。  勿論今後も新作魔法は発表される。変わらない歴史などない。けれど一区切りとして、我々の誇りをここにまとめ上げたい。変わっていく歴史の中の、変わらぬ我らの勲章として。  この国の、1000年続く幸福を願う。  第73代魔法使い協会長 マクベルス=アードラ―
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