八月

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八月

 夏期講習。初日。  ほんとはぺーもガラシも誘ったんだけど、「夏休みに勉強の話をするなんて、ミヤオには人の心が無い!」ってぺーにマジギレされて、ガラシも「おれはいいや」ってぜんぜん乗り気じゃなかったから、ひとりで夏期講習をうけることになった。  塾は成績でABCDにクラスを分けられて、おれはもちろんDクラスだった。  Dクラスにはおなじ学校のヤツがふたりいて、隣のクラスのヤンキー越野(こしの)とおなじクラスの鈴木だった。越野とは住む世界がちがうし、野球部の鈴木とも今まで話すことなんてなかったけど、まあこれもなにかの縁だよなってさっそくふたりにカラんでいって彼女とかいるのか聞いたら、ふたりともいないって言ったからマンガの参考にはならなかった。  で、それからの二週間、べつに学校でも仲が良かったわけじゃないし、夏期講習が終わったら話すこともないふたりだったけど、最終日に塾の駐車場でやる花火大会までなんとなくずっと一緒にいた。  で、さすがに花火大会だったらなんか面白いこと起きるだろって越野と鈴木と一緒に参加したんだけど、他の学校の女子とマンガみたいなラブコメ展開なんか起きなくて、よく分からないうちに端っこで越野と鈴木と円になって一緒に線香花火をしただけで終わった。  期待はしてたけど期待なんかしてなかったから、なにもなく終わった夏期講習になんも思わなかった。  鈴木が野球部を辞めたってことと越野が「将来、先生になろうと思ってる」ってヤンキーからいちばん遠い夢を語ってたくらいしか記憶になくて、他は特に面白いことは起きない二週間だった。  マンガだったら、0点のオチだ。
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