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九月
二学期。始業式。
少し早めに学校に着いて廊下を歩いていたら、もう隣の教室には人がいて、窓越しに見たらヤンキー越野で、前の席の横川になんか勉強を教えてもらっているみたいだった。教科書を前に頭を抱える越野と、泣きそうな顔の横川の対比がなんか面白かった。横川は災難だけど越野が本当にマジメになってるのは嬉しい。
これから先、越野と横川にラブコメ展開があったらおもしろいよなってありえない妄想をしながら教室に入って、驚いた。
藤田が丸刈りになっている。
「頭どうした?」
って言って、おれはニヤニヤしながら自分の席に着いた。
「髪型を思い切って変えたら運気が上がるって、占いで言ってたから」
「山中に占ってもらったのか?」
「いや、テレビの占い。なんかあれから気になっちゃって、つい観ちゃうんだよ」
「へえ。でも思い切るって、そういうことなのか?」
「え、違うの?」
マジで分かってない顔で藤田に聞き返され、朝から面白いものが見れて笑ってたら、
「おはよう」
って、言われて、振り向いたらメガネをかけた清水だった。
おいおいふたりともイメチェンかよ。最高だな。
「メガネ、いいじゃん」
「そうかな?」
すこし照れ臭そうにした清水が、おれの真似なのかメガネを小さくクイクイってした。
「世界がよく見えるだろ?」
「かもしれない。よく分かんないけど」
たしかにメガネをかけたくらいじゃなにも変わらないけど、前までのクールな印象はだいぶなくなって、清水の心のカタチが見た目に出ている感じがする。
「なんて言えばいいか分からないけど、だいぶいい感じだとおれは思う」
藤田が、一生懸命に考えたことだけが伝わる特に意味のない感想を言った。
「う、うん。なんか、ありがとう」
ちょっと困りながらも嬉しそうな清水。
「清水が困ってるじゃねえか、藤田コノヤロー」
「ご、ごみん」
藤田が噛んで、おれと清水は笑った。
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