完璧男子の欠点

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勘違いしてもらっては困るが、俺は別に女に優しいわけではない。 かといって暴力的なことや無理強いも絶対しないが。 ホテルはちゃんとしたとこ選ぶし、最後まで意思確認をしてからヤる。 女に、『この関係を望んだのは自分だ』と認識させるためにも。 俺のこの顔。このカラダ。 自慢じゃないが運動神経もいい。 逆ナンやスカウトもしばしば。 この外見ーーだけじゃなくても、『剣持』の跡取り息子というスペック。 あわよくば落としてやる、自分に夢中にさせてやるーーそんな思惑が垣間見えるコも、そうじゃないコもーー 基本、守備範囲な相手なら来る者は拒まず。去る者は追わず。 気になる子は気が向けばあいさつ代わりにあくまで軽ーく口説く。 関係はいつでも短期契約みたいなもんだ。 だから、何があっても俺に弱みは一切ないのだ。 『婚約者がいる』とはっきり伝える。 相手が誰でも遊びで、本気になることはない。 関係を持ったとしても、続けて付き合う気もさらさらない。 家に行き来したり、デートしたり…そんな気は毛頭ない。 ドライな関係だ。 それでもいいという女ーーその中から性欲解消の対象を選んではいる。 女は柔らかくてキレイで可愛い。 男の遺伝子に刻まれた本能っていうのには、抗えない。 全く、種の保存のためとはいえ、このメカニズムはうまく出来ていると思う。 この世にオカモトさんたちがいなかったらーー想像しただけでゾッとする。 ただ。いかに肉食な俺とはいえーー 不思議と、どんなに美人でも。スタイルがよくても。 魅力を全く感じない女ってのは二種類いる。 そういうコには滅多に手を出さない。 ーーなんていうんだろう? 自分がない、からっぽなーー皮膚だけの人形、みたいな? もう一つは、人間の奥底に、ひそめた悪意のあるコーー シようと思えば全然デキるけど、そういうコは、積極的に抱く気にはならないんだな。合わないし、ヤってもあんま、楽しくない。 「あのっ…剣持さん」 廣田まりんはおずおずと顔を赤くしていて、煮え切らない態度に気の長くない俺は若干イラつく。 「…何?」 かすかに寄った眉間の皺に、廣田まりんはビクッとカラダを震わせて涙目になる。 「まりんちゃん」 なぜかまわりを固めている女たちが廣田まりんを庇うように俺を見つめる。 ーーなんだ? 「迅くん」 「…?」 女たちはチラチラとお互い視線を絡ませる。 ーーなんだよ?なんかした、俺? 廣田まりんなんて、抱いてないぞ? 「あのっ…どうか付き合って下さい!!!」 意を決したようにすうっと息を吸った廣田まりんは、一気にそう言うと、真っ赤になってはあはあと息継ぎをした。 「…」 俺は口を引き結ぶ。 公開告白?罰ゲームか? なんだ?この女ーー
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