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「狐と狸は人間に化ける。なんてよく言われるけど実際そうかなんて分からないでしょ?」
私は、自販機から買ったばかりの、おーいお茶のペットボトルの蓋を開けながら歩実に言った。
「いや……じゃあ、その尻尾は何なの?」
呆れたように、歩実が私のそれをギュッと握る。
「や、やめろぉぉぉぉ!!!そこは弱点だぁぁぁぁ!!!」
思わず体がブルっとなる。ついでにお茶を吹いて、死んだ。
「どう見てもこの尻尾狐じゃん。今じゃ全校生徒が知ってるよ?あんたが狐だってね。大体コスプレじゃないのなら、その4つの耳は何なの?バレバレというより、バラす気しかないよね。」
歩実は呆れた様子で、私を見つめた。
「ぐぬぬぬぬ、こ、これはコスプレなんかじゃない!」
「じゃあ本物じゃん。」
冷静かつ正論のツッコミが入ったので軽く泣く。
「あ、歩実と狐ちゃん。おはよう!」
ニコニコと、私達のやりとりを見ていたのか、美香が歩いて来た。
「あー……美香。おはよ。あんたまた髪ボッサボサじゃん。大丈夫?まぁ、誰かさんの尻尾もだけど。」
そう言いながら、歩実は美香の髪を直していた。お母さんみたい。
「えへへ、ありがとう美香ー!頼りになるねー!」
「…はぁ」
嬉しそうにお礼を言う美香に、歩実はため息をついていた。
それを見て私は、歩実は疲れているのかもしれない、と思う。
人間は疲れている時、溜息を吐くんだよとお父さんが言ってた。そして、眉を潜めるとも。
そうです、私は狐です。でも………人間の世界にちょっとだけ憧れている。だから、人間の姿になって人間に馴染む練習中。まあ………
「行くよー、コスプレやろー。」
「だから、コスプレじゃなぁぁぁい!」
まだ、時間は掛かりそうです。
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