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やっと、午前の授業が終わった。1時間目から4時間目まで全部、体育か道徳なら面倒じゃないのに。なんで数学なんかやらなきゃいかんのさ………。
「ほら、狐ちゃん!急いで、購買に走らないと!!今日は焼きそばパンがあるんだよ!」
「えっ!?焼きそばパン!!!???」
美香の言葉に、ぐでーとしていた体と尻尾がピンと伸びる。
「反応早いな!?」
それに、歩実がつっこんでいた。でも、そんなのはどうでも良い!焼きそばパンは走らないといけないんだよ!!!
「はぁ……まぁ行ってこいよ。私は弁当だから……ってもう居ない!?」
美香と共に、私は教室3階から1階まで全力疾走していた。
「はぁ……はぁ………ふへぇ…………!毎日大変だなぁ…………。」
美香が何が死にかけてるけど、そんなこと知ったこっちゃない。何せ今の私の頭には焼きそばパンの6文字しかない。
「焼きそばパン!焼きそばパン!!焼きそばパン!!!」
私は自分の尻尾と耳(獣)が揺れているのは分かっていたけど……そんなもの知るか!
「よしっ、着いた!って人凄いーーー!」
「狐ちゃん!?は、はぐれちゃ…………」
私から数秒遅れて着いた美香とは、どうも途中ではぐれてしまったらしい。が、気にしてない。
「おばさん!焼きそばパン!!」
「はいよ!毎度!」
私はパン売り場まで辿り着くと、おばさんといいコンビネーションで焼きそばパンを手に入れた。
が、後ろから人はわんさか来る。それを逆流するのは普通の人でも大変だと聞いている。
「わっ!!」
私は逆流している間に、何かを勘違いされたのはたまに尻尾を握られる。手すりじゃねーんだよ!!!
なんとかその波から出てくると、ピューンと階段を登った。そして教室に辿り着く。さながら大物の魚を取った時の気分だ。
「あーおかえり。って、美香は?」
「置いてきた!!!!」
「バカかお前。」
迎えてくれた歩実は弁当を半分ほど食べ終わっていた。その隣にはデザートのプリンが置いてある。
「わぁープリンだ!!美味しそう!」
私はジッーと見つめた。
「狐、ちょっと。」
歩実は私の耳(獣の方)に口を近づけて囁いた。
「これさ、美香のプリンなんだよ。食わね?共犯者でさ。」
歩実の提案はまさに甘言だった。
「どーせ、バレねぇって。」
そして、
「「ごちそーさまでしたー」」
結局プリン諸共私達はお昼を食べ終わった。
「た、ただいまー………って2人とも食べ終わってる!?」
美香がフラフラした足取りで帰ってきた。手には、フランスパンが握られている。美香は、焼きそばパン戦争に負けたらしい。
まぁそれよりも、朝直してもらったはずの髪がそれより酷くなっている気がするけど
「ん?んんん????私のプリンがっ………無い!?」
美香が緊急事態に気がついたらしい。
「プリン?何の事だ?」
「机の上に置いたはずなのにー!!!なんでー!?
もしや、食べた?」
美香がギロッと私達を睨む。一瞬背中に冷や汗が垂れた。
「食べてないよ!ね?歩実。」
「あぁ、食べてねーよ。そういや、今日の運勢って金運が良いんだってな。」
謎の話題で話を逸らす。が、
「運勢?それってプリンの蓋の後ろに書いてあるやつの事?それって開けなきゃ見られないと思うんだけど??」
完全に墓穴掘り掘りしてしまった。
「あ、いや、その…………」
「…………2人とも後でね?」
ニコッと笑った美香の目は残念ながら笑っていなかった。
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