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「だからな、俺は次のステージでりるりんを殺すよ」
「…………」
「寝てますか? 由布子さん?」
由布子からは返事が無い。まぁ、聞いてもらったところで何がどうなるわけでもないが。これはただの俺の宣戦布告だ。
次のステージは十日後だ。
俺は、覚悟を決めている。
***
「みんなー! 今日も来てくれてありがとー! ステージ楽しんでってね!!」
「「「うおおおお!!!!! りるりーん!!! ラン☆スタ最高!!!!!!」」」
盛り上がるオーディエンス達よ、今日がお前らにとっても俺にとっても最後のりるりんのステージだ。今日をもってりるりんは俺の世界の住人になる。全ては俺のものになる。俺が……俺がりるりんの最後の男になるんだ……。
「この後のチェキ会もよろしくねー!! 皆、愛してるー!!!」
ステージが終わった。さぁ、ショータイムだ。
・
・・
・・・
「こんどーさん、今日も来てくれてありがとう♡ 今日もいっぱいグッズ買ってくれたのね♡ 今日もラブラブでチェキしよっ!」
「りるりん、今日は、俺、りるりんに言わなきゃいけない事があるんだ」
りるりんは「ん?」と上目遣いで俺を見る。俺は覚悟を決め、ショルダーバッグの中に手を伸ばす。バッグの中にはナイフが入っている。りるりんを刺して、俺も自死する。そうだ、やれ! 俺!!
バッグからナイフを取り出そうとしたその時だった。
『ドスン!!!!!!』
俺の背中に激痛が走った。
「なっ……何だ……!?」
口から血を吐き出した。何が起こっているんだ……何が……!?
「修治……! ずっとあんただけを追いかけて来たのに……!」
背後には由布子がいた。俺は由布子に刺されたのだ。何で、何でだ!?
「ずっと、修治だけを見て修治だけを追いかけて修治だけを愛してきた。こんなクソガキにあんたは渡さない! だから、私と一緒に死んで!!!!!!」
そう叫ぶと、由布子は自分の喉元を掻っ切った。
由布子から血が噴き出る。俺の背中と口からも血が流れ出る。意識が遠のく……意識が……消える……。
俺は……
俺は……夢ばかり見ていて、近くに俺を想ってくれている人がいる事にも気付かなかった。ああ、死ぬ前に、それに気付けただけいいか?
りるりん……ごめん……俺、先に逝くよ。
俺には分かるんだ。好きな相手を追いかけて追いかけ続けた末に、自分だけのものにしたくなる心理ってやつがさ。
今回は、女の情念に負けた……な……。
────了
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