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※~※~※
──静まり返った部屋の押し入れにティナは横たわっている。
その両脇で、黒いフードのポンチョを着た少女とゼロが揃って膝を抱えていた。
「ゼロ、あのお母さん、見届けなくていいの?」
「いい。まだ死なない人間がどうなろうと知ったこっちゃないし」
「それはそうだけど」
少女が傍らのティナに視線を落とす。横たわったままピクリとも動かず、命の灯が尽きかけているティナを。
「だったらゼロ。なんであの人に遊戯を? 死神である私の姿が見えない彼女に、まだ死は訪れない。なのにあんな嘘ついて」
「……うるさいな」
不機嫌そうに口をとがらせたゼロがプイッとそっぽを向く。
「私の姿が見えたのは、……この子」
「わかってるよ。オレが狩らなくても、もうすぐだ」
物心ついた頃から、薄闇と暴力しか知らなかったティナ。死を迎えたら、少しは安らかに眠れるのだろうか。
「あんな母親をこいつ、許しやがった。……こんなフォークについたクリームだけで」
ゼロが手にしたフォークをクルリと回し、小さなため息を漏らした。
「人間のことは私たちには理解できないよ。永遠に」
「……だな」
「ゼロが人間に肩入れするの、珍しいね。いつもは私がそう言われて叱られるのに」
死神の少女に覗き込まれ、逃げるようにゼロが傍らにあるティナのスケッチブックをパラパラと捲る。そしてあるページで手を止めた。
「これがさ、オレとお前だって」
そこには黒いポンチョの女の子と赤い三角帽子の男の子が描かれている。
「うん、知ってる」
「そんで、オレたちのこと……その。か、かわいい、カッカッ……カカカ」
「ああ、かわいいカップルだとか言ってたね」
ズバッと言われて、ゼロは「はわわわ」とおかしな声を出しながら耳まで真っ赤になった。
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