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「№13……まさかこれ、死神?」
「正解。まもなくその死神がアンタの魂を黄泉の国へ運ぶ」
「……」
ルナの顔に張り付いていた笑みがついに消えた。
「ふ……ざけんな! なんであたしが!? 鎌で命を取られるなんて」
「あ、その死神が持ってる大鎌って、人間の勝手な想像にすぎないから。実際に命を狩るのはそういう役割を持った別のヤツで、そいつは……」
「そんなのどっちだっていいんだよ!」
「ボクだよ」
「は?」
ルナが眉をひそめてゼロを見つめる。
「命を狩るのは、ボ・ク」
三角帽子の下から覗く口元が口角を上げ、さらにゼロはゆっくりと目を上げた。
「聞こえた? それはボクの役目。アルカナナンバー0……俗にいう愚者ってカードの寓意を表すのがボク。ボクは自由で何モノにも囚われない」
ルナが周囲のカードを順に目で追うと、真後ろに0と書かれたカードがあった。金髪の青年が木の枝に括り付けた小さな荷物を担ぎ、軽やかに歩く絵柄が。
「ボクは新しい旅立ちって解釈もされるんだけど、それは死への旅立ちも含まれる。死が迫った人間をきっちり狩るのもボクのシ・ゴ・ト」
くるりと回って帽子を取り、ゼロがうやうやしく一礼をした。そのおどけた様子にルナの身体がゾクリと戦慄く。
「バ……バカバカしい! だからガキは嫌いなのよ、そんなタチの悪い遊びには……」
そこまで言って、ルナは前方のゼロの様子に目を見開いた。
彼の周囲、靄のような黒い闇から何本もの人の腕が伸びてきている。
「ゼ、ゼロ! あんたの周り……!」
その腕はまるで何かを求めるように、彼のズボンや袖にまとわりついている。
「ん? ああ、こいつら。あんたと同じ、もうすぐ死神に連れて行かれるヤツらの霊体だよ。カケラだけどね」
「……!」
「敏感なヤツは自分の死期を霊体レベルで悟って、こうしてボクに〝狩らないでくれ” って縋ってくるんだ」
ゼロが周囲をピシッと跳ね除けると、腕たちは霞むように消えていった。
「ムダだよ。死神の仕事は絶対……でも、ボクが気まぐれに狩らないまま放置しとくと、死神も連れて行けないんだ」
(こ、こいつ……本物だ)
ゼロの薄笑いに背中が凍り付く。
頭上に死神のカード、背後には№0愚者……そして目の前にはゼロ本人。
ルナに自分の死というものが否応なく突きつけられた瞬間だった。
「た、助け……死にたく、ない」
「だーかーら、助けてあげてもいいって言ってるじゃん。最初から」
ゼロが再び指をパチンと鳴らすと、格子の床に突然通路のような真っ直ぐで白い模様が現れた。
「……ゲームに勝ったらね」
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