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奥まで続く白い道の先は二股に分かれている。分かれた先は黒い靄に覆われて全く見えない。
「なに、この道……」
「ここをずんずん進んで行くと、三回別れ道がある。それを一回でも正しい方を選べたらあんたの勝ち。題してThe fork in the road ゲーム!」
「え、一回でいいの?」
三回のうちの一回。それなら十分勝機はある。
「簡単でしょ? じゃあサクッといこうか。……よーい、スタート!」
楽し気にゼロが宣言すると、その場は一瞬にして闇に包まれ、明かりは足元の白く光る道だけとなった。
「行くしかないわ。一回くらい楽勝よ!」
震える足を無理やり前に出し、ルナは道を歩き出した。このままでは本当に現実の自分に死がやってくる、そう理屈抜きで感じられる。
【もうすぐ最初の別れ道だよ】
ゼロの声だけがどこからかはっきりと聞こえてくる。進むほどに前方の闇は薄れていき、やがて道が二股に分かれているのが見えた。
その別れ道の傍らにうっすらと人影が浮かび上がる。
「え……桜子!?」
そこに居たのは同じ店で働く、キャストの桜子だった。
【別れ道にはそれぞれあんたの知っている人物がいる。その人はどっちを選べばあんたが生き残れるか知ってるんだ】
「そうなの!? じゃあ桜子に聞けば!」
【うん。でもさぁ……】
クスクスとゼロの忍び笑いが聞こえてくる。
【果たしてその人は、正しい道を教えてくれるかな】
「……!」
ゼロの言葉にルナはハッと息を飲んだ。
(そうだ……桜子にとってあたしは邪魔な存在。わざと違う方を選ばせればあたしは死ぬ!)
だがいくらライバル視しているとはいえ、殺したいとまで思うだろうか。
【わかった? これがこのゲーム、フォークインザロードの醍醐味。さあ、どっちを選ぶ? シンキングタイムは3分だよ】
別れ道で足を止めると、桜子がゆっくりと顔を上げた。
「ルナさん、正解は右だよ。早く右の道に進んで!」
「…………」
桜子の切羽詰まった表情は、本当に心配してくれているように見える。けれど客商売のルナたちにとって、そんな演技など容易いのも事実だ。
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