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名残惜しいが、こんなゲームから一刻も早く抜け出したい。その思いからルナはリョージから手を離した。
「ゼロ、左へ行くわ」
【どうぞ】
二回目の別れ道も左。振り返るとリョージが優しい笑みで手を振っている。その魅力的な笑顔に、ため息と共に蕩けそうになってしまう。
(ああ……! やっぱりあたしたちは運命の相手なんだわ。こんなところで死んでたまるもんか!)
ためらいなく左に進むと、さっきと同じように靄が晴れて新しい道が現れた。
次で最後。三回目の別れ道を正しく選べばこのゲームからも死の運命からも解放される。ルナの足取りも軽くなり、気が付くと駆け出していた。……が、なかなか別れ道に辿り着けない。
「ちょっとゼロ! まだまだ先なの?」
【もう少しだよ。最後の別れ道はちょっと不安定なんだ】
「不安定?」
するとようやく道の先にぼんやりと最後の別れ道が見えてきた。その傍らに立つ人のシルエットが、今度はやけに小さい。
「あっ……!」
その人物の姿に、ルナは反射的に足を止めた。
【さあ、最後の協力者だ。あんたが生き残る為の正解を知っている……あんたの娘だ】
「ティナ……」
まるで亡霊のような細い影。絡まって左右長さの違うザンバラ髪は、他でもないルナがムシャクシャしたときにハサミを入れたもの。左肩から首に広がる火傷も以前ルナが熱湯をかけた時の痕だった。
「ママ……」
か細い声でティナがルナを呼んだ。
「ティナ、どっち? どっちが正解なの?」
「…………」
「早く答えろよ!」
両肩を掴むと、いつもと同じ怯えた目をする。ルナはこの目に苛々してどうにもならない。
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