13番目のアルカナ ーfork in the roadー

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「あんた、あたしが死んだらどうしてくれんのよ! さっさと答えを教えなさい!」 「わ……から、ない……」 「なに!?」  ティナの怯えた目から涙が溢れた。ルナがギリリと奥歯を噛んで宙を振り仰ぐ。 「ゼロ、どういうこと!? この子、正解を知らないって!」 【知ってるよ】 「は?」  そうしている間にもティナはポロポロと涙を流し、肩を震わせている。 【その子がわからないのは、あんたを生かすべきか殺すべきか。自分がどちらを望んでいるのか……それがわからないんだよ】 「なっ……!」  ルナの中にマグマのような怒りが噴き上がった。だがここでティナを傷めつけるのが得策でないことはわかる。 「ティ、ティナ……。どうしてぇ? ママが死んじゃったら困るでしょぉ? なんでわかんないのよぉ」 「…………」 「そりゃちょっとは叱る時だってあるけど、それは(しつけ)よ? ほら、ママだって優しい時もいっぱいあるじゃない」  ピクンと肩を揺らし、ティナがゆっくりと片手をあげて別れ道の右を指さした。 「ママ……右」 「え? そうなの? 本当!?」  いつもと同じ虚ろな目は感情が読めない。なぜ急に教える気になったのか、そこがルナはどうにも気になる。 「ねえ、どうして急に?」  するとティナの口角が次第に上がり、不気味な笑顔になった。 「あの、ね……ケーキ、おいしかったの」 「……え……」  ルナの脳裏に、眠りにつく前の事が蘇る。 「フォークにね……残ってた。甘くておいしい……」 「な……」  これは皮肉だろうか?   ケーキはルナが食べた。あんな残りカスとも呼べないようなフォークに付着したクリームごときで教える気になったと?  その時、頭上に一枚のタロットカードが降りてきた。不気味な黒いオーラを滲ませるそれは他でもない、13番目のアルカナ『死神』。 「……! 嘘ね!? あんたがあたしの死神そのもの……! 騙されるもんか!」  踵を返し、ルナは大股に一歩踏み出した。 「ゼロ! 左よ、最後も左!」 【OK。じゃあそちらへどうぞ】  もう迷いなどない。ティナは自分を殺そうとしたのだ。 (許さない……親を殺そうとするなんて! ここから出たら覚えてろよ)  最後の別れ道、フォークのような二股を左に進むとパアッと眩しい程の光が満ちた。 「……やっぱりこっちが正解だったのね! はは……あはははは、ざまあみろ! あたしは勝った、あたしは生きる……!」  ──おっと、答え合わせを忘れてたね──  ゼロの声が間遠に聞こえる。 「全問正解でしょ! この分かれ道のゲーム、完璧に攻略……!」  ──あんた、全部間違ってたよ── 「え……っ」  クスクス…… アハハハハ……  その瞬間、ゼロの笑い声を聞きながらルナは光の洪水に飲み込まれた。
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