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「あんた、あたしが死んだらどうしてくれんのよ! さっさと答えを教えなさい!」
「わ……から、ない……」
「なに!?」
ティナの怯えた目から涙が溢れた。ルナがギリリと奥歯を噛んで宙を振り仰ぐ。
「ゼロ、どういうこと!? この子、正解を知らないって!」
【知ってるよ】
「は?」
そうしている間にもティナはポロポロと涙を流し、肩を震わせている。
【その子がわからないのは、あんたを生かすべきか殺すべきか。自分がどちらを望んでいるのか……それがわからないんだよ】
「なっ……!」
ルナの中にマグマのような怒りが噴き上がった。だがここでティナを傷めつけるのが得策でないことはわかる。
「ティ、ティナ……。どうしてぇ? ママが死んじゃったら困るでしょぉ? なんでわかんないのよぉ」
「…………」
「そりゃちょっとは叱る時だってあるけど、それは躾よ? ほら、ママだって優しい時もいっぱいあるじゃない」
ピクンと肩を揺らし、ティナがゆっくりと片手をあげて別れ道の右を指さした。
「ママ……右」
「え? そうなの? 本当!?」
いつもと同じ虚ろな目は感情が読めない。なぜ急に教える気になったのか、そこがルナはどうにも気になる。
「ねえ、どうして急に?」
するとティナの口角が次第に上がり、不気味な笑顔になった。
「あの、ね……ケーキ、おいしかったの」
「……え……」
ルナの脳裏に、眠りにつく前の事が蘇る。
「フォークにね……残ってた。甘くておいしい……」
「な……」
これは皮肉だろうか?
ケーキはルナが食べた。あんな残りカスとも呼べないようなフォークに付着したクリームごときで教える気になったと?
その時、頭上に一枚のタロットカードが降りてきた。不気味な黒いオーラを滲ませるそれは他でもない、13番目のアルカナ『死神』。
「……! 嘘ね!? あんたがあたしの死神そのもの……! 騙されるもんか!」
踵を返し、ルナは大股に一歩踏み出した。
「ゼロ! 左よ、最後も左!」
【OK。じゃあそちらへどうぞ】
もう迷いなどない。ティナは自分を殺そうとしたのだ。
(許さない……親を殺そうとするなんて! ここから出たら覚えてろよ)
最後の別れ道、フォークのような二股を左に進むとパアッと眩しい程の光が満ちた。
「……やっぱりこっちが正解だったのね! はは……あはははは、ざまあみろ! あたしは勝った、あたしは生きる……!」
──おっと、答え合わせを忘れてたね──
ゼロの声が間遠に聞こえる。
「全問正解でしょ! この分かれ道のゲーム、完璧に攻略……!」
──あんた、全部間違ってたよ──
「え……っ」
クスクス…… アハハハハ……
その瞬間、ゼロの笑い声を聞きながらルナは光の洪水に飲み込まれた。
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