第一章

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同中の辺見樹と俺、朝比奈拓海は樹が中二で転校して来てからの仲だ。地元の駅から自宅までの帰り道途中に樹のマンションがある。こいつは梅雨時(つゆどき)にも関わらず、朝降っていなければ決して傘を持っては来ない。 「折り畳みくらい入るだろうに」 「俺折り畳み嫌い。畳めない」 「何だよそれ…」 俺より3センチ低い頭を寄せてくる。 傘の中なら大丈夫。誰にも何も言われない。誰にも邪魔されない。 こうやって触れ合う距離にいても…。 下らない話で笑うその顔も、触れ合う肩も、今だけは全部俺だけのものだ。
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