第六章

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 翌日、朝一で母さんがすっ飛んで来た。 「辺見君、熱せん妄…だったらしいね?」 「は?」 「何か高熱で異常行動起こすっていう…」 「…んなんじゃ…ねぇし」  俺の荷物は昨日のうちに中町がホテルから持って来てくれていた。  母さんがそれを両手で持ち上げる。 「さぁて、帰ろっか…」 「……なぁ」 「ん?」 「まだ帰れねぇよ…俺」  目元を覆って泣き出した俺に、母さんは 「分かった…」  たった一言、やたらと優しい声でそう言った。
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