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雨音が聴こえる
俺は彼女が手に持っている傘を
自分の手に取ると
彼女の手を握り言った。
「俺は、雨降ってほしいな…… 雨よ 降れ!」
「どうして?」と彼女が聞いた。
「だってさ……雨が降ると、
雨音が聴こえるでしょ?
その雨音は俺たち二人だけの世界を
作ってくれる」
と言うと、凌空は彼女の傘を広げた。
そして、広げた傘で二人の姿を隠すと、
「こういうことが できるから……」と呟くと
凌空の唇が彼女の唇にそっと触れた。
雨が降ってきた。
降り出した雨は、
雨音となって……
二人の傘に音色を落とす。
「舞華……」凌空が優しく微笑む
二人は雨音に包まれながら、
霧に包まれた紫陽花道を
一本の傘をさして歩いて行く……。
~ 雨音が聴こえる 完~
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