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大会当日。緊張で胃がキリキリと傷んだ。この感じに懐かしさを感じる。練習を手伝ってくれたメンバーが出ている短距離走やハードル走の応援をしていても、緊張で気持ちがうまく入りきらない。
陸上競技については、どの種目も東校と互角に戦っていた。圧倒的にどちらかが強い訳ではなく、接戦で勝ったり負けたりしている。
「中距離走は東校に全国レベルの選手がいるの。1位にこだわらなくていいから気負い過ぎず頑張って」
美帆の言葉を胸にスタートラインに立った。さっきまでの胃の痛みは消えて、程よい緊張感だけが体中を駆け巡っている。
用意、スタート
掛け声とともに飛び出し、まずは先頭集団に入り込む。だけど、早々に1人が飛び出した。あれが全国レベルの人かな、そんなことを思っていると、徐々に先頭集団が縦に並び始めた。1周目で4位。まずはこんなもんか。
2週目で1人抜いて3位に上がる。前の2人は東校の選手。前に出たいけど、1人はるか先を走っていてとてもじゃないけど追いつきそうにない。
3週目に入ったあたりで2位の選手の真後ろにつける。接触しないよう距離を取り、フォームが崩れないよう意識する。相手の肩の動きが少しずつ崩れ始めてきたのを見て、一気にスピードを上げて追い抜いた。
ラスト一周。もはや1位には追いつかないくらい差が開いている。せめてこの2位を維持することが今できる精一杯だろう。
残り半周を切ったあたりで、わずかながら後ろからの息遣いが大きくなってきたような気がした。1位が断トツなだけに、ほとんどの選手が2位狙いなのだ。気分は先頭を走っているようなもので、追いかけられている恐怖を感じながら、ペースを乱さないように足を動かす。
残り100m、残りの力を振り絞ってスピードを上げると、トップの選手が視界に入ってきた。もしかしたら……いけるかも? さらにスピードを上げて距離を縮める。
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