明日も走る

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 夏休みが終わると、学校内が慌ただしくなる。10月上旬に行われる体育祭の準備が始まるからだ。  公立ながらも難関大学へ進学する人も少なくない我が高校のモットーは文武両道、自立自学。ゆえにこの体育祭とその後に待ち構えている文化祭への気合の入れ方は半端じゃない。  そして体育祭に関してはもう1つ、力が入る理由がある。人数の関係もあり、すぐ近くの高校と合同で行うのだ。ウチが西高で向こうが東高と呼ばれている両校はいいライバル関係にある。  体育祭では、より多くの競技で勝利した方にこの市で一番大きい体育館の優先使用権が与えられる。この体育館、バスケットのコート2面分の広さがある運動場に加えて卓球場、室内テニスコートまである大きな体育館だ。ただでさえ狭い学校の体育館を多くの部で取り合っている中、体育館が使用できるとなると多くの部活動に影響が出る。  去年は負けてしまったため、自転車で30分程かかる別の体育館へ通うことを余儀なくされた人たちもいたのだとか。なので各競技で精鋭が集められ、特訓の日々が続くらしい。 「大智(だいち)はどの競技にする?」  出場する競技のアンケートを前に悩んでいると、クラスメイトの寒川(さむかわ)要司(ようじ)が声をかけてきた。 「真面目にやるつもり無いし、下位にいても目立たない競技にするよ。100m走とか」  俺はこの体育祭に真剣に取り組む気はなかった。授業や遊びで体を動かすのは好きだけど、勝敗を競うのは苦手だ。個人競技なら上位は運動部の奴らが占めるし、下位になったところで上位のポイントしか加算されないから影響は無い。  アンケートを出してから3日程経った頃だろうか。放課後に無理矢理陸上部の奴らに呼び出され、グラウンドにいた。俺の他にも2人いて、こちらもなんで呼び出されたのか分かっていないようだった。 「いきなりで悪いんだけど、俺たちの練習に付き合って」  それだけ言われて、いきなりグラウンドを走らされた。それも何周走ったか分からなくなるくらいに。マネージャーが終了の笛を吹いた頃には陸上部のメンバーですら立ち上がれなくなっている人もいたくらいだった。
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