真山さんと聡太くん

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「卯月の兄貴」 「どうした?」 「俺も卯月の兄貴と一太みたくなれますか?血が繋がっていなくても親子になれますか?」 「あぁ、なれるさ。真山、まわりを見てみろ。俺だけじゃない。裕貴や信孝がいる。鷲崎もいい相談相手になるだろ。だからもう一人で悩むな」 「はい。卯月の兄貴ありがとうございます」 腰を九の字に曲げて深々と頭を下げる真山さん。迷いが吹っ切れたのかここに来た時よりも表情が明るくなっていた。 「聡太、お医者さんに行こうな。心配するな、俺も医者が大嫌いだから」 「あ、そうだ」 肝心なことを言い忘れていた。 「真山さん、保険証と医療費の受給者証ちゃんとありますか?上澤先生は産科婦人科の先生だったんです。母子手帳もあるといいかも知れません」 「喜代子はK市から住民票をまだ移していない。保険証も医療費の受給者証もない」 「持ち合わせはあるのか?」 「少しなら」 「足りないなら蜂谷に借りろ」 真山さんを見送ったのち、ヤスさんに電話をする彼。 夜逃げ同然に真山のところに行ったなら、元カレのところにもしかしたらあるかも知れないだろ?四季に住所と元カレのことを聞いてもらったほうが手っ取り早い。そう判断したみたいだった。
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