彼と和真さん

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「はじめまして。朝宮四季、旧姓長澤四季の夫の朝宮和真です」 「取って食ったりはしないからそんなに緊張するな。こっちまで緊張するだろう。真山だ」 「昨日卯月さんから電話をいただいて、すぐに岩水に連絡をしたんです。部屋中探してもなくて、ベランダを見たら隅のほうにこの黒いごみ袋がひとつあるのを見付けたそうです」 和真さんが大きめの紙袋を真山さんの前に置いた。 「ちらっと中を見たら母子手帳が見えたみたいでこれじゃないかと預かってきました。橋本のことを思い出すから処分してくれと伝言を預かってきました」 「もしかしてごみ袋ごと預かってきたのか?」 真山さんが紙袋からレジ袋ほどの大きさのごみ袋を紙袋から取り出した。縛ってあるのをほどきなかを開くと、ぷ~~んと何ともいえない臭いがしてきて、真山さんが顔をしかめ思わず鼻を摘まんだ。 「使用済みオムツと一緒に捨てようとしたのか。にしても臭い。きみはよく平気でこれを持ってきたな。卯月の兄貴も臭くないんですか?」 「風邪気味で鼻が詰まっているせいだと思います」 和真さんがそう答えると、 「俺か?燃えるごみの日は週二回だ。オムツを出すのは俺の役割だからな。慣れている」 次に彼が平然と答えた。
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