彼と和真さん

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「廊下に新聞紙を敷いて母子手帳と医療費の受給者証を天日干ししておいてくれ。少しは臭いがとれるはずだ。すくすくセットも開封せずに捨てるとはな。予防接種と健診は必ず受けなきゃならないんだぞ」 ぶつぶつ言いながらくしゃくしゃになっている用紙を手で一枚ずつ伸ばす彼。和真さんも手伝ってくれた。 「出生届を役所にちゃんと出したことは褒めるべきか。無戸籍の子どももいるからな」 「そうですね」 和真さんは真山さんに抱っこされる聡太くんを愛おしそうにちらちらと何度も見ていた。 「和真、子どもは何人欲しいんだ?来年には一人産まれる予定なんだろ?」 唐突に質問され、ゴボゴホとむせる和真さん。飲んでいたカフェオレを吹き出しそうになった。 「新婚さんには野暮な質問だったか?」 「いえ、そんなことないです。四季は一人っ子だったから二人は欲しいって。私は父を越えたいです」 飄々として答える和真さん。彼がマジか……と独り言を呟き目を丸くしていた。彼が驚くのも無理がない。和真さんのお父さんの和彦さんには和真さんを含め六人も子どもがいるんだもの。 「卯月さんみたいな大家族を目指します」 「おぅ、頑張れ。色々と大変だが応援してるぞ」 「はい、頑張ります」 背筋をぴんと伸ばし堂々と答える和真さんに、彼がエールを送った。
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