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真山さんがなかなか見付からず、一太と奏音くんが代わり番でギャンギャン泣く聡太くんを抱っこしあやしていた。
「まるで火の玉をだっこしてるみたいだね」
「そうたくんのパパどこに行っちゃったんだろうね。困ったね」
聡太くんも二人もすっかり汗びっしょりだ。
「ママ、ひまちゃん泣き止んだね」
「そうたくんの泣き声にビックリしたのかな?」
「そうかも知れないね。一太、奏音くん、柚原さんが抱っこを代わるって」
「一太まだ大丈夫だよ」
「かなたも」
「シャワーを浴びて、ご飯を先に食べてこい。聡太は逃げないよ」
「ほんとに?」
「ぱぱたんが嘘をついたことがあるか?」
「ない」
二人の声が見事にハモった。
「一太くん行こう」
「うん!」
一太と奏音くんが仲良く連れ立ってお風呂に向かうと、入れ違いに真山さんが電話で喋りながら上機嫌で戻ってきた。
「ま~や~ま~!」
ひろお兄ちゃんが喉から唸り声を出した。
「ヘラヘラ笑ってんじゃねぇよ。どこに行ってたんだ。聡太が泣いている声が聞こえないのか」
叱りつけると、
「怒るだけ無駄だ。耳がつんぽなんだ。しょうがない」
「女の声は聞こえるのにか?」
「じゃあ、別なところに耳がついているんだろ」
話しに夢中で、なかなか聡太くんを抱っこしようとしない真山さんに、ひろお兄ちゃんと柚原さんが次第に苛立ちはじめた。
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