彼と和真さん

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「オヤジ、犬の散歩をしていた通行人が組事務所近くのゴミ集積所で血だらけで倒れている男を見つけて110番通報をした。生死は不明だが鈴木の孫かも知れない。和真じゃないか、久し振りだな。それにしてもずいぶんと早起きだな。新婚の奥さんをほっといて大丈夫なのか?」 姿を見せたのは鞠家さんだった。 「どうした?」 笑いを堪える和真さんを怪訝そうに見る鞠家さん。 「すみません。卯月さんにも同じことを聞かれたので」 「なるほどな」 「シスコンの副島と、娘が可愛くて仕方がないヤスさんが四季の側にいてくれるので大丈夫です」 「和真、焼もちを妬かずいつも仲良くしてくれてありがとうな」 「ヤスさんに焼もちを妬いたらそれこそ罰が当たります。ヤスさんが四季の側にいてくれるから安心して仕事が出来るんです」 「そうか。これからもヤスを宜しくな」 「はい」 ヤスさんと和真さんは馬が合う。ほんとうの兄弟みたいだ。そんなことを彼が話していたことをふと思い出した。 「すっかり話しが脱線してしまった。若い衆とごみ拾いをしながら組事務所のまわりをパトロールしていたら、次から次にパトカーが来て何事かと思って様子を見に行ってきた」 「元デカとしての血の気が騒いだか」 「かも知れないな」 鞠家さんがくすっと笑った。 「真山どうする?病院に行くか?」 「行かない。聡太にミルクを飲ませて、上澤医師に紹介してもらったN総合病院に連れていかないといけない」 「真山、非常に言いにくいことだが男は一番近いN総合病院に搬送された。ばったり会わないように気を付けるんだな」 「忠告ありがとう」 真山さんの表情が引き締まった。
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