彼と真山さん

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彼と真山さん

「真山さん、聡太くんを守ったんですね」 「遥琉の心配症が役に立ちました」 鈴木の孫はナイフを隠し持っているかも知れない。用心に越したことはないからと彼が真山さんに防刃チョッキを着て行けと渡した。 聡太くんを抱っこしているから両手は塞がっている。襲撃されたら一貫の終わりだ。彼の不安は的中した。 「背中を刺されたみたいですが軽症で済んだみたいです。聡太くんも無事のようです。そのうち帰ってきます」 「明日帰るんですよね?」 「一旦帰るみたいですよ」 意味が分からなくて首を傾げると、 「宇賀神組に帰っても自分の居場所はない。渋川さんと橋本さんに別れを伝えてくるそうです。聡太くんを引き取り自分が育てる決意を固めたそうです」 聡太くんは診察を待っている間も、診察を受けているときもずっと真山さんの指をぎゅっと握っていたみたいだった。少しでも真山さんの顔が見えないとギャン泣きして、真山さんが抱っこするとぴたりと泣き止みニコニコの笑顔を見せてくれる。そんな愛くるしい表情を見せてくれる聡太くん。 「真山さんなら聡太くんのお父さんになれると思う。惜しみない愛情を注ぎ育ててくれると思うんです」 「そうですね」 橘さんとそんな会話をしていたら、真山さんが帰ってきた。
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