彼と真山さん

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「母子手帳を見たら聡太くんは一カ月健診を受けていない。知り合いの医者からつい最近飛び込み出産で男のややこを産んで、金を払わずいなくなった妊婦がいると聞いたんだ。もしかしたら橋本さんのことかも知れない。真山さんには二、三日入院して火傷の治療と、体重の増減が極端に少ないから栄養不足だけじゃなく、大きな病気が隠れているかも知れないから精密検査を受けるように言ったんだ。胸のぜこぜこも気になるし」 「そうだったんですね」 「真山さんは三日くらいちっと待ってくんちょって言っていたけど、待ってらんねぇべ。今日栃木さ帰って明日大きい病院を受診してすぐ入院出来ればいいけど、そだ上手くいきっこねぇべした。また紹介状と検査が必要になる。それだけ治療もそうだがもし病気が隠れていたら発見も遅くなる。だからバーバさんにはちぃとばっか大袈裟かも知れないが一刻の猶予もない。聡太くんの付き添いをしてくんちょって頼むから待ってろって言ったのに勝手に帰るし。あやまった」 斉木先生がため息をつきながら頭をくしゃくしゃと掻いた。 「あっ……やべ」 まさか斉木先生がいるとはこれっぽちも思っていなかった真山さん。気付かれる前に逃げようとしたけど、聡太くんが急に泣き出したものだから呆気なく見付かってしまった。
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