慶悟さん

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彼が鞠家さんと一緒に連れて帰って来た男性は茶髪で背の高い男性。がっしりとした体格で日焼けして全身が真っ黒だった。 「度会さん、お久し振りです」 やや緊張した面持ちで頭を下げる男性。 「会田の弟子の慶悟じゃないか。どうしてここにいるんだ?」 「えっとそれは……」 言葉を濁らす男性。 「もしかしてお前か?ヤクザになりたいと事務所に押し掛けてきたというのは」 「だってもうこれしか方法がないんです。相手はヤクザに得体の知れない新興宗教団体ですよ。俺の大事なたもと四季を守るには俺が強くなるしかないんです」 「あのな慶悟……」 度会さんが深いため息をついた。 「会田も一度こうと決めたら最後までやる男だ。だから仕事に関しても一切妥協しない。昔気質の頑固オヤジだからな。悪いところばかり俺に似て困ると嘆いていたが……。会田にはちゃんと言ってきたんだろうな?」 「ぶん殴られるので手紙を置いてきました」 「短気は損気だ。血の気が多いのが会田の欠点だからな。弟子入りして3日と持たず逃げ出すことで有名な会田のところでよくまぁ五年も持ったもんだ」 「逃げ出したことは何度もあります。だから正確にいうと4年と……」 両方の手を出して、指で数えはじめる慶悟さん。 「見た目はあれだが根は真面目な男だ。よっぽどのことがあったんだろうよ。卯月、何があれば俺が責任を持つ。しばらく面倒をみてやってくれ」 「分かりました」 彼が軽く頭を下げた。
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