久し振りの一緒の風呂

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「朝っぱらからみんな元気だな」 背伸びをしながらふぁ~~と大きな欠伸をする彼。 「今日はどういう訳かすこぶる調子がいいんだ」 「そりゃあそうでしょう。未知さんエキスを満タンにチャージしたのですから」 橘さんの言葉にギクッとする彼。 「あなたという人は……呆れてものがいえません」 「そういうお前だって喜んでいたろ?持ちつ持たれつ……イデ!」 苦痛に顔を歪ませうずくまる彼。 「踵で思いっきり足を踏むヤツがいるか」 「いますよ、ここに」 「また痴話喧嘩をしているか?相変わらず仲がいいなお前ら。長年連れ添った熟年夫婦みたいだな」 子どもたちを小学校へ送るついでにコンビニエンスストアに出掛けていたひろお兄ちゃんが帰って来た。 「は?」 「え?」 彼と橘さんの眉間にどんどん皺が寄っていった。 「間違ってはいないはずだ」 ひろお兄ちゃんは二人に睨まれも飄々としていた。 「未知、ゼリーなら口当たりがいいし食えるだろう?焼きたてのパンを買ってきたぞ」 「ありがとうひろお兄ちゃん」 「いいってことよ。兄貴、ついでに診察券を出しに行ったら、上澤先生が度会さんに野暮用があるみたいで八時に往診に来てくれるって話していたぞ」 彼が柱時計を見ると、 「あと五分で八時じゃねぇか。太惺と心望を急いで起こさないと」 慌てて走りだした。 「橘、兄貴の暴走を毎回止めてくれて感謝する。それと雷を落としてくれてありがとうな」 「いいえ、どういたしまして。野菜スープを作ったので持ってきますね」 橘さんがひろお兄ちゃんからゼリーとパンが入ったマイバックを受け取ると台所へと向かった。
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