久し振りの一緒の風呂

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「上澤先生、お忙しいのにありがとうございます」 「ちょうど度会に用事があったんだ。未知さんも顔色が悪いようだがあまり無理しっさんなよ。ややこの面倒は卯月さんと橘さんに頼んで少し寝たらどうだ?」 「未知、上澤先生の言う通りだ。一時間くらい横になれ。橘も裕貴も心もいるしなんとかなる」 「あ、でも……」 「もし未知に倒れられたら俺が一番困る。だから、たまには素直に甘えてくれ」 「うん、分かった。子どもたちのことお願いね」 「おぅ、任せておけ」 彼が目を細め、嬉しそうに微笑んでくれた。 上澤先生の野暮用というのは血圧の薬を処方してもらうために定期的に診療所に通院している白雪ハツさんから、夫である義夫さんに関してある相談をされたということだった。 「了禅さんだって七十代になっても現役バリバリで、三十歳も年下の女と同棲しているくらいだからな。義夫さんが若い女と浮気していると聞いてもさほど驚かなった。ただ」 「ただ?なんだ?」 「その女、妙に引っ掛かるんだ。安井カオルと同じ匂いがぷんぷんする。何か良くないことが起こりそうな、そんな気がするんだ」 「兄貴の勘はよく当たるからな」 ひろお兄ちゃんも女性について上澤先生から聞いたみたいで、彼同様に女性に対し不信感を抱いたみたいだった。
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