那奈姉さん

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那奈姉さん

「名残惜しいが明日には東京に帰る。心と未知と三人でデートをしてご飯を食べれてすごく嬉しかったし、楽しかった。話しも沢山出来た。思い残すことばかりだが、達者でな」 手の上にひろお兄ちゃんの大きな手が重なってきて、包み込むようにそっと握られた。 「心さんに焼きもち……」 「妬かないよ。心はきみには焼きもちを妬かない。でも那奈に対してはすごいぞ」 困ったように苦笑いをした。 「子どもを三人も抱えて忙しいのは分かるが、未知が心配しているから、元気だって一文でいいから手紙くらい書けてやれと那奈に言った」 那奈姉さんとはすっかり音信不通になってしまった。元気でいればいいな。それがずっと気がかりだった。 「那奈さん、弟である未知さんともっと話がしたいんだと思うよ。子育ての悩みや夫に対する愚痴を聞いてもらいたいと思っているかもしれないよ。那奈さんは究極のツンデレで意地っ張りだ。もっと素直になればいいのに。信孝さんや龍成さんがそう言っていた」 「ひろお兄ちゃん、ナオさんありがとう。僕、那奈姉さんに手紙を書きます。待っているだけで何もはじまらないから」 自分から行動を起こさないと。堂々巡りのままだもの。
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