那奈姉さん

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「元気そうで良かった」 彼の声が頭の上から聞こえてきたからドキッとした。 「遥琉さん、心臓に悪いから突然現れないで。びっくりした」 「それは悪かった」 ーちょっと裕貴!ー 那奈姉さんの怪訝そうな声が聞こえてきた。 「さっき福島にいるって言ったはずだ」 一緒にいるとは聞いていない。切るねー 「那奈!」 ひろお兄ちゃんが声を荒げた。 「きめっこしてないで未知と話しをしてやれ」 「那奈、俺からも頼む」 ひろお兄ちゃんと彼の声が見事にハモった。 ー本当、仲良しねー ぷぷっと那奈姉さんが笑った。 ーママ、だぁれ?ー 女の子の声が漏れ聞こえてきた。 ー裕貴おじさんだよー ーここちゃんは?ー 「いるよ、有紗ちゃん」 ーなんで心までいるのよ。明日子どもたちを押し付けるつもりでいたのにー ーあーちゃん、ここちゃんとあそびたかったなー 「ごめんね、有紗ちゃん。また今度遊ぼうね」 ーうん、わかったー ー未知に代わってくれる?ー 「分かったよ」 ひろお兄ちゃんからスマホを渡された。 「二人きりにしてやろう。もし気に触るようなことを言われたら切っていいぞ」 心配性の彼。結局一分も経たないうちに戻ってきて、隣にどかっと腰を下ろした。 ー遥琉と地竜に愛されて、両手に花で羨ましいー 「那奈姉さんこそ」 あれほど那奈姉さんの声が聞きたかったのに。いざ話すとなると何を話していいかお互い分からなくて。気まずいまま時間だけが過ぎていった。
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