四季さんが巻き込まれた2年前の事件

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四季さんが巻き込まれた2年前の事件

「うわぁーー!」 「でたぁーー!」 素っ頓狂な声を上げ、石弓に弾かれたように飛び上がる彼とひろお兄ちゃん。 「びっくりした。いつからそこにいるんだ」 「心臓が止まるかと思ったぞ」 「私は幽霊ではありませんよ。七分前からずっとここにいましたよ。あと三分待っても気付いてもらえない時は声を掛けようと思っていました」 橘さんが彼に茶封筒を差し出した。 「これは?」 「四季さんが育ったしらさぎの丘児童養護施設に関する調査報告書です。アットホームな環境で、あたたかく子どもたちが安心できる場所と評判がよい一方で芳しくない噂があったもの事実です。まさかここまで闇が深かったとは……。遥琉、裕貴さん、真山さんと四季さんを助けるためだと思い一肌脱いでください」 「なんで四季の名前が出てくるんだ?」 「そもそもの元凶がこの男だからです」 橘さんが男の顔写真を指差して語気を強めた。 「四季さんのお兄さんから聞きました。しらさぎの丘児童養護施設で職員による入所女子に対する性的ないたずらが行われていると内部告発があったそうですよ。理事は揃いも揃って地元の名士で、円谷さんは元警察関係者です。事件そのものがなかったことになってしまったそうです」 「園長の円谷は先日亡くなったはずだ。見れば見るほど誰かに似ているんだよな」 彼が首を傾げた。
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