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私は必死に祐人の後を追うが、この距離も空いていく。このままだと見失ってしまう。
すると、公園のベンチに座るおじさんの隣りに置かれた自転車が視界に入った。これだ。
私は公園に入り、自転車のハンドルを掴んだ。
「お借りします!」
ひと声かけて、自転車のスタンドを上げる。
「え、ちょっと君」
「必ず返します!」
詳しく説明している暇はない。既に葉山くんの姿が豆粒ぐらいになっている。
私は立ち漕ぎをして、まずは祐人のところまで追いかける。私の後ろからおじさんもきている。
私は祐人まで追い付くと、漕ぐスピードを緩めず、後ろを指さした。
「自転車おじさん、よろしく」
「へ?」
私は祐人の理解力を信じ、葉山くんの後を追った。
「葉山くん!」
私の声に葉山くんは振り返った。そして私が自転車だと分かると、逃げ切れないと思ったのか足を止めた。
私は自転車を止めて、カバンから手紙を取り出す。
「これ、華から。葉山くんに渡してほしいって頼まれたの。受け取ってあげて」
「華って・・・、緑川さん!?」
そうだと頷くと、葉山くんはみるみるうちに顔が赤くなっていく。彼は手を震わせながら手紙を受け取った。
もしかしたら、二人が付き合うまで、そう時間はかからないんじゃないかなと思った。
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