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葉山くんに無事手紙を渡した帰り道。私は自転車をゆっくり漕いで祐人がいる所に戻る。
葉山くんが逃げた理由は、委員のことで言われると思ったらしい。そういえば、葉山くんも美化委員だった。私は逃げた彼を少し説教した。
しばらく漕いでいると、祐人とおじさんが待っていた。おじさんの表情はにこにこ笑顔だ。祐人がちゃんと説明をしてくれたらしい。
おじさんが去り、祐人と二人だけになると、彼は口角だけ上げた。
「若ちゃんが怒られずに済んだのは僕のおかげだからね。『自転車おじさん、よろしく』で分かった僕を褒めてほしいよ。それで、手紙は渡せた?」
「渡した。あの反応は絶対両思いだよ」
私の言葉に、今度は本当の笑顔を見せた。
すると、私達の後ろから誰かが走ってくる足音がした。先生だった。
「水樹、木沢。さっきまで葉山といなかったか?」
「そうですけど、どうしました?」
祐人が首を傾げると、先生は手にしたプリントを見せた。
「これ、今日中に葉山に渡さないといけない物なんだが・・・」
私と祐人は顔を見合わせる。祐人の顔は、いいこと思いついたかのようにぱっと笑顔になる。
これは代行人の予感がする。私が何か言う前に、祐人が先生の手からプリントをひったくる。
「代わりに届けます!」
やっぱりか!だが祐人は、葉山くんがいた方向とは逆に走る。どこに行くんだと思っていると、
「おじさーん!自転車貸してー!」
と、自転車のおじさんを追いかけていった。
そしておじさんの自転車がまた使われた。
〜完〜
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