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「なんだその気の抜けた返事は」
すかさず楼主に突っ込まれ、苺はぎくりと肩をふるわせた。
楼主は鋭い観察眼を持っている。
いつもと違う反応をすれば、何かあるんじゃないかと探られてしまう。
いつも通りにしなければ…
だが、焦っているせいかいつも通りがどうだったか思い出せない。
すると、隣にいた菖蒲が口を開いた。
「あの、ちょっといいですか〜?」
楼主の視線が苺から右手をあげた菖蒲へと移る。
「なんだ?珍しく物言いでもあるってのか。つまらねぇ屁理屈だったら承知しねぇからな」
しずい邸に潜り込んだことを謝るか、それとも自分に非はあっても苺にはないと庇ってくれるのか。
とにかく珍しくナイスタイミングだ。
菖蒲の助け舟にホッとする苺。
ところが菖蒲の口から出たのは予想を遥かに超えたものだった。
「苺があなたのこと好きだそうです」
苺は漫画のようにブーっと吹き出すと、菖蒲を凝視した。
確かに協力してくれるとは言ったが、まさかド直球で人の気持ちをバラすなんて誰が予想できただろうか。
普通協力と言ったら、相手に好きな人がいるか探ったり、苺のことをアピールしたりするようなことだと思うのだが…
この兄本当にバカすぎる…!!
苺は怒りと殺意でふるふると震えながら兄へ眼差しを向ける。
そんな苺に向かって、菖蒲はぱちんと片目をつむると右手の親指をグッとたてた。
やってやったよ!と言わんばかりのドヤ顔だ。
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