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引き戸の扉がカラカラと開き、腰にタオルを巻いただけの紅鳶が現れた。
相変わらず逞しい体つきだ。
健康的な肌とあちこち盛り上がった筋肉の隆起が男らしくて、何度も見てるはずなのに胸が高鳴ってしまう。
紅鳶は入ってすぐに鼻をすんすんと動かした。
「酒か?」
「はい、日本酒を少し入れてみました。代謝が上がり疲れに効くそうです」
アオキの言葉に紅鳶は「そうか」と満足げに微笑む。
だがすぐにきょとんとした表情でアオキを見つめてきた。
「アオキはどうして脱いでないんだ?」
アオキは裸ではなく、薄い生地の長襦袢を纏っていた。
風呂の準備をしている間裸で待っていようか何度も悩んだのだが、どうしても恥ずかしくて長襦袢だけ羽織ったのだ。
紅鳶からしたらアオキの裸なんて見慣れてはいるのは重々わかっている。
裸どころか、筆舌に尽くし難いほどはしたない姿を何度も見せてきた。
だが、褥の上で見せるのと風呂場で見せるのとはなんだか違う気がするのだ。
うまく言えないが。
「え?あ…えと…お、俺は背中を流す役目があるので」
アオキは慌ててそれらしい理由を取り繕う。
「とにかく身体が冷えますから座ってください」
そして、紅鳶が何かつっこんでこないうちに椅子に座るよう促した。
「湯をかけますね。熱かったりぬるかったりしたら言ってください」
風呂釜から掬った湯を肩からゆっくりかけ流す。
たちまち浴室にふわりと酒香りが広がった。
ほんの少しクラッとしたが、アオキは紅鳶に訊ねた。
「どうですか?」
「あぁ、ちょうどいい」
アオキはホッとしながら、広い背中を温めるために何度か湯をかけていく。
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