お背中流します

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次にアオキは柔らかなボディータオルに石鹸をたっぷりと泡立てると、紅鳶の背中を洗い始めた。 ボディータオル越しにでもわかる筋肉の膨らみと、しっかりとした骨格。 ちょっとやそっとのことで倒れないのは、この逞しい肉体が物語っている。 背中を洗ったあとは、腕を洗う。 残るは体の前の方だ。 そこでアオキははた、と止まった。 前に触れてもいいものか逡巡したからだ。 「どうした。前も洗ってくれないのか」 わずかに振り向きながら紅鳶が訊ねてくる。 「お、俺がやっていいんでしょうか」 「もちろんだ。頼む」 アオキは少しドキドキとしながら、背中側から前方へと腕をまわした。 「そっちからか」 紅鳶がクスリと笑う。 「しょ、正面は緊張するので」 たっぷりと追加した泡を紅鳶の胸板に広げていく。 しかし、鍛え抜かれた肉体は筋肉の厚みがあるため、身体を密着させないと腕がまわらない。 アオキは紅鳶の背中に自分の胸を押し当てるような感じで前方を洗うしかなかった。 しかも目視をすることができないため、手探りでやるしかない。 ちゃんと正面からすればよかったと後悔する。 だが言い出した手前、今更変えるのもかっこうがつかない。 とにかく粗相のないよう慎重に洗わなければ。 アオキはゆっくり慎重に紅鳶の胸板や太ももを洗っていく。 すると、突然紅鳶が腰に巻いていたタオルを外した。 そしてアオキの泡にまみれた片手を掴むと、タオルで隠れていた場所へと導く。 「ここも頼む」 覚えのある感触に、アオキの身体はたちまちビクッとなった。 紅鳶のもっとも男らしい場所に触れてしまったからだ。
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