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菖蒲の発言を頭の中で繰り返す。
苺も好きな人いるんだもんね
苺も好きな人いるんだもんね?
苺も好きな人いるんだもんね!?
五秒後、苺は盛大に叫んでいた。
「はあぁああぁあ!?」
「あーん、耳いた〜い」
わざとらしく耳をおさえる菖蒲の胸元を掴むと、苺は鬼気迫る勢いで詰め寄った。
「俺に好きな人がいるってどういうことかな、お兄ちゃん」
「もぉ〜なんでそんなに怒るのおこりんぼ〜本当のこと言っただけでしょ〜」
「俺がいつ、誰を、好きだっつった?ああ?」
苺はわりと短気な方で、気に入らないことがあるとすぐにブチギレてしまう。
時々このキレやすさのせいでゆうずい邸の男娼と揉めることもあるくらいだ。
ところが、苺の鬼のような形相に迫られても菖蒲は至って平然としている。
そればかりか、それまでとろんと垂れていた目をスッと細めると急に真顔になった。
「楼主のこと好きなんでしょ」
ズバッと突き抜けるような菖蒲の言葉に、苺の顔がたちまち赤くなっていく。
それは明らかな動揺だった。
「はあ!?だ、誰があんな奴のこと!つーか、あんなジジイぜんっぜん興味ないし恋愛対象じゃねぇし」
捲したてる苺だが、その目はキョロキョロとおよぎ、額には汗まで滲んでいる。
「そう?前にお仕置き部屋でいじめられてから苺のあの人を見る目つきが変わった気がするんだけど」
菖蒲の言葉に、苺はうっと呻くと口をつぐんだ。
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