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数ヶ月前の事。
苺と菖蒲は座敷牢で折檻を受けた。
苺が勝手に舌にピアスをあけたのが理由だった。
淫花廓では男娼は商品だ。
たとえ自分の身体であっても許可なく傷つけてはならない。
無論タトューやピアスなどの身体改造はタブーである。
それでも興味があった苺は、客である外科医に頼みこみ(半ば脅した)、プレイの一環として舌に穴をあけたのだ。
正直タンピぐらいで叱られるなんて心外だったし、納得できなかった。
セックスが主体のこんな場所なら、ピアスやタトューはもっと受け入れられてもいいはずだと思っていたからだ。
しかし、そんな反抗的な考えが楼主の癇に障ったらしい。
その日初めて、楼主から直接折檻を受けたのだ。
それまで苺は誰かに苦痛を与えることはあっても苦痛を受ける側になったことはなかった。
見た目とは裏腹にサディスティックな質を持つ苺を指名してくる客は数多いたし、自分は誰よりも強くて無敵だと思っていた。
ところがその日、苺のプライドはけちょんけちょんに折られた。
楼主の圧倒的な攻めに完全に屈服してしまったのだ。
普通なら絶対落ち込むところだが、不思議とダメージはなかった。
それどころか、楼主から受けた折檻を思い出しては身体を熱くさせてしまうという状態になってしまったのだ。
自分より遥かに歳上で、冷血鉄仮面。
性格も最悪だし全くタイプじゃない。
なのにあの鋭い眼差しや声を聞くたびに胸が高鳴り、その姿を目で追うようになってしまった。
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