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しかしまさか菖蒲にバレているとは予想外だった。
そういえば昔からこういう時だけ妙に鼻が効くのが菖蒲だった。
初めて精通した日もズバリ言い当ててきたし、セックスを経験した日もズバリ言い当ててきた。
産まれた日が同じというだけで普通の兄弟とさして変わらないと思っていたが、双子という血と絆が影響しているのかもしれない。
苺はぐぬぬ…と唸りながらも腹を括ると、再び菖蒲に詰め寄った。
「言っとくけど、誰かに話したら一生セックスできない身体にして縁切るから」
「え〜どうしよっかな〜」
冗談っぽく答える菖蒲の首をぎりぎりと締め上げる。
すると観念したのか菖蒲が両手をあげて降参した。
「わかったわかった。でもこのままずっと本人にも言わないつもり?」
「は?ばっか!い、言えるわけないだろ!?」
苺は顔を真っ赤にしながらフイとそっぽを向く。
相手は楼主だ。
歳の差はもちろんだが、楼主と苺の間には雇い主と労働者という大きな壁が立ちはだかっていて、それを越えるのは容易なことではない。
それがわかっているからこそ、なんとか自分の中だけで消化させようと必死になっていたのだ。
「でもそれじゃあ苺苦しくない?」
菖蒲の言葉がぐさりと胸のどこかにつき刺さる。
苦しいに決まってる。
絶対叶わないとわかっているのに溢れてくる気持ちが、こんなにも苦しいだなんて思ってもみなかった。
そもそも苺は菖蒲とセットで問題児と言われていて、楼主には随分呆れられている。
そんな自分の事を好きになってもらえる自信も全くないというのに。
苺は唇を噛み締めると、行き場のない想いを誤魔化そうとする。
すると、菖蒲がにっこり笑いながら肩を組んできた。
「苺よ、菖蒲が協力してあげよっか」
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