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「これは…一体どういうことだ?」
目の前に繰り広げられた光景に驚きながらも、紅鳶はなんとか平静を保ちながら訊ねた。
「うさぎです!」
アオキは紅鳶の困惑などお構いなしに元気よく答えるとにこりと笑う。
頭の上に乗せられた長い耳がぴょこんと跳ねるのを眺めながら紅鳶は「あぁ、そうだな」と呟いた。
仕事から帰宅すると必ず出迎えてくれるのがアオキの日課だ。
客の相手をしていた現役の頃に比べたら肉体的な疲れは減ったものの、色んな方面に気を遣わなければならないため(特に娼妓の管理には手を焼いている)毎日精神的な疲れを引きずって帰宅する。
そこに出迎えてくれるアオキの存在は、紅鳶にとって何よりの癒しであり、生きる糧にもなっている。
今日もそんな癒しが待つ自宅へと帰宅したのだが、玄関先で出迎えてくれたアオキの格好がとんでもないものだった。
胸元がぱっくりと開いた黒いレオタードに編みタイツ。
そして頭にはうさぎの耳。
完全にバニーの衣装なのだ。
なぜ今日に限ってその衣装姿なのか、今朝や昨夜の会話を思い出してみるものの全く結びつくようなものがない。
「とにかく奥に行って話をしよう。ここだと誰か訪ねてきたとき困るだろ」
紅鳶はアオキの肩を押すと、玄関から遠ざけようとした。
滅多に誰も訪ねてはこないが、庭師や使いの男衆が外にいる可能性は充分にある。
アオキのこんな姿を見られるわけにはいかない。
すると、アオキが突然暗い表情になった。
「やっぱり俺、こういうの似合いませんよね…すみません、困らせて…」
俯向きながら呟くアオキに、紅鳶は慌てて違うと反論する。
「むしろその逆だ。その…目のやり場に困るほど似合っている。だから他の誰にも見られたくないんだ」
紅鳶の言葉に、アオキが上目遣いで訊ねてきた。
「本当ですか?」
「あぁ」
「良かったです」
安心したのか、アオキは頭の上の耳をぴょこぴょこ揺らしながら紅鳶の前を歩いて部屋の奥へと入っていく。
レオタードのラインは際どく、ふっくらとしたかたちの良いアオキの尻が更に強調されていてエロい。
よく見ると臀部には丸い尻尾までついていて、アオキが歩くたびぷりぷりと左右に揺れている。
食べてくださいと言っているようなものだ。
煽情的すぎる光景に、紅鳶は目頭を押さえるとふーっと息を吐いた。
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